この記事では以下を目標として記します.
- ABC定理の成立を仮定して, フィボナッチ数列中に現れる累乗数が高々有限個であることを証明する.
ABC定理
まずはABC定理のステートメントをここに書いておきます.
という函数の具体例として以下を計算してみます.
のとき
のとき
のとき
イメージとしては, 「を少し大きくすればの値を上回る. 」という感じです. 乗して少し大きくするのは, を満たすabc-tripleはどのようなにおいても存在するからです (例えば充分に大きい整数を取ってを選ぶ. 第二成分はで回程割れる).
フィボナッチ累乗数は高々有限個である
は正整数, はそれぞれリュカ数, フィボナッチ数とします.
証明. とおいて一般項を代入し, に注意して計算すると
同様に\begin{align} L_n&=\frac{(\phi^n+\bar{\phi}^n)(\phi-\bar{\phi})}{\phi-\bar{\phi}}\\ &=\frac{\phi^{n+1}-\bar{\phi}^{n+1}+\phi^{n-1}-\bar{\phi}^{n-1}}{\phi-\bar{\phi}}\\ &=F_{n+1}+F_{n-1}. \end{align}
証明. 補題 3 よりであるから,
証明. のとき, 補題の二番目の等式により \begin{align} L_n-F_n=F_{n+1}+F_{n-1}-F_n=2F_{n-1}\geq0. \end{align} のときは自明である.
では証明に入ります.
証明. が累乗数となるようなをとる. の偶奇によって場合分けし, いずれの場合もの値に上界があることを確かめる.
が奇数のとき
補題 3 よりであり, の最大公約数をとおくとは互いに素になるので, この組はabc-tripleである.
このときとして定理 2 を適用すると, \begin{align} \frac{5F_n^2}{d}\le K{\rm rad}\left(\frac{L_n^2}{d}\cdot\frac{4}{d}\cdot\frac{5F_n^2}{d}\right)^{5/4} \end{align} を満たす正実数が存在する. ここで, \begin{align} {\rm rad}\left(\frac{L_n^2}{d}\cdot\frac{4}{d}\cdot\frac{5F_n^2}{d}\right)&\le{\rm rad}(L_n^2)\cdot2\cdot5{\rm rad}(F_n^2)\\ &=10{\rm rad}(L_n){\rm rad}(F_n) \end{align} ここでは累乗数よりが成り立つので
よって, \begin{align} \frac{5F_n^2}{d}\le K\cdot\left(30F_n^{3/2}\right)^{5/4}.\end{align} 定数の部分をまとめてとおいて整理すると \begin{align} F_n^2\le K'F_n^{15/8}&& F_n^{1/8}\le K'\\\end{align} となって, の値は有限個に限定された.
が偶数のとき
なので, 上の議論とほぼ全く同様にして,
なる実数の存在が示される. 定数の部分をまとめてとおいて補題 5 を用いると \begin{align} L_n^2\le K'F_n^{15/8}\le K'L_n^{15/8} \end{align} 整理するととなって, この場合もの値には上界が存在する.
同様な証明方法を用いて次の定理も示すことができます.
補足
フィボナッチ累乗数
今回はABC定理の仮定のもとでフィボナッチ累乗数が高々有限個であることを証明しましたが, 実は, フィボナッチ累乗数は \begin{align} 1,\ 8,\ 144 \end{align} のつのみであることが2004年に「モジュラー」の手法によって証明されています. 特にフィボナッチ平方数がとのみであるという事実はとても有名なので, このブログでもいつか証明を紹介したいと思っています. 追記 : 書きました !
https://yu200489144.hatenablog.com/entry/2021/06/01/215825
参考文献
[1] Andrew Granville (2005), "Featured Article." F. Q. (The Fibonacci Quarterly), Vol.43, No.01; pp.3-14.
[2] Waldschmidt, Michel (2015), "Lecture on the conjecture and some of its consequences." Springer Proc. Math. Stat. 98. Basel: Springer; pp.211–230.