Arithmetica

フィボナッチ数と平方数, 記数法.

Arithmetica 算術ノート

フィボナッチ数列に現れる平方数が 1 と 144 のみであることの初等的証明

Fibonacci 数列の正の部分 \begin{align}1,\ 1,\ 2,\ 3,\ 5,\ 8,\ \ldots\end{align} に現れる平方数は 1 と 144 のみである.

 

この記事では, 以下を目標として上記の定理を証明します.

  • 初等整数論によって Fibonacci 平方数の定理を証明する.



前提知識

合同式フェルマ (Fermat) の小定理, 平方剰余と平方非剰余 (語句の意味) など



2022 年 9 月追記 : 大幅に内容を修正し, 証明法を新しくしました*1.







前提

定義 1. Lucas 数列\ (L_i)\ および Fibonacci 数列\ (F_i)\ とは, あらゆる整数\ i\ に対して \begin{align} \left( \begin{array}{l} L_0=2,\ L_1=1,\ L_{i+2}=L_{i+1}+L_i\\ F_0=0,\ F_1=1,\ F_{i+2}=F_{i+1}+F_i \end{array} \right. \end{align} と定義される整数の列である.

具体的には, 二つの数列は次のようなものです. \begin{align} \begin{array}{c|ccccccccc} i&\cdots&-3&-2&-1&0&1&2&3&\cdots\\\hline L_i&\cdots&-4&3&-1&2&1&3&4&\cdots\\ F_i&\cdots&2&-1&1&0&1&1&2&\cdots \end{array}\end{align} \begin{align} &(L_i)_{i\gt0}=1,\ 3,\ 4,\ 7,\ 11,\ 18,\ \ldots,\\ &(F_i)_{i\gt0}=1,\ 1,\ 2,\ 3,\ 5,\ 8,\ \ldots. \end{align}

命題 2. あらゆる整数\ n\ に対して, 等式 \begin{align} \left( \begin{array}{l} L_{-n}=(-1)^nL_n\\ F_{-n}=(-1)^{n+1}F_n \end{array} \right. \end{align} が成立する.

証明 (数学的帰納法). \ n=0\ のときおよび\ n=1\ のときは正しい. ず一行目の式について, ある\ n+1\ \ n\ において等号が成りたつならば, それらを辺々足して\ n-1\ に対する等式が得られ. また辺々を引けば\ n+2\ の場合が得られ, 再帰的に確かめることができる. 二行目の等式も同様である.

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続いて, 合同式論から平方剰余に関する定理を紹介します.

定理 (第一補充則). ある素数\ p\ を法とする合同方程式 \begin{align} \underline{xx\equiv-1\ \ ({\rm mod}.p)} \end{align} が解を持つようなことは, \ p\ \ 4\ の倍数よりも\ 1\ または\ 2\ だけ大きい数である場合のみに有りうる. しかもそのような素数\ p\ の全部に対して, この方程式は解を有する.

証明. (略)

第一補充則の説明は省きますが, 本記事の証明を通して用いる下線部分は, Fermat の小定理を使ってそれよりも簡潔に導出することができるので, その証明を述べます.

命題 3. 如何いかなる平方数に\ 1\ を加えた数も\ 4\ で割って\ 3\ 余る素因子を持たない. 従って, ある整数に\ 1\ を加えた数が\ 4\ で割って\ 3\ 余る素因子を持つならば, その数は必ず非平方数である.

証明. 仮に平方数\ NN\ \ 1\ を加えた数が\ 4\ で割って\ 3\ 余る素因子\ p\ を持つとするならば, Fermat の小定理の式 \begin{align} (NN)^{\frac{p-1}{2}}\equiv1\ \ (\mathrm{mod}.p) \end{align} から\ (-1)^{(p-1)/2}\equiv1\ なる合同式が導かれる. これは\ -1\equiv1\ を意味するのであるが, \ p\ \ 3\ 以上の法であるから, 非合理である. 

\Box

平方数よりも\ 1\ だけ大きい数を素因子分解してゆくと次の系列が得られ, 確かに\ 4\ の倍数よりも\ 3\ だけ大きい素因子は現れていないことがうかがえます.

\begin{align} 1&\;,\\ 2=&\;2,\\ 5=&\;5,\\ 10=&\;2\times5,\\ 17=&\;17,\\ 26=&\;2\times13,\\ 37=&\;37,\\ 50=&\;2\times5^2,\\ 65=&\;5\times13,\\ 82=&\;2\times41,\\ 101=&\;101,\\ 122=&\;2\times61,\\ 145=&\;5\times29,\\ 170=&\;2\times5\times17,\\ 197=&\;197,\\ {2}{2}{6}=&\;{2}\times{1}{1}{3},\\ 257=&\;257,\\ 290=&\;2\times5\times29,\\ 325=&\;5^2\times13,\\ 362=&\;2\times181,\\ 401=&\;401,\\ 442=&\;2\times13\times17,\\ 485=&\;5\times97,\\ 530=&\;2\times5\times53,\\ 577=&\;577,\\ 626=&\;2\times313,\\ 677=&\;677,\\ 730=&\;2\times5\times73,\\ 785=&\;5\times157,\\ 842=&\;2\times421,\\ 901=&\;17\times53,\\ 962=&\;2\times13\times37,\\ &\vdots \end{align}





概略

て, 整数\ N\ について, これが平方数であるかいなかを表現する不定方程式, \begin{align} mm=N \end{align} の解法には様々なものが存在しますが, 今回は主題となる方程式\ F_n=mm\ の解を決定するにあたって, ある「特殊な形の整数」の素因子と剰余を見てゆきます. 文字\ p\ を奇素数とするとき, 先述の命題によれば, 合同方程式 \begin{align} xx\equiv-1\ \ ({\rm mod}.p) \end{align} が解を持つためには\ p-1\ \ 4\ の倍数であることが少なくとも必要でありました. ここにおいて, 若し\ 4\ の倍数よりも\ 3\ だけ大きいある整数\ M\ をもって, \begin{align} F_n\equiv-1\ \ ({\rm mod}.M) \end{align} を成立させることができれば, \ M\ \ 4\ で割って\ 3\ 余る素因子\ p\ を必ず持つ*2ので, \ F_n\ が平方数になることは\ F_n≡-1\ \ ({\rm mod}.p)\ により否定されることになります. 詰まり, 解になりうる整数\ n\ の候補を絞りこむことができるのです.

この解法の妥当性を示すために, 下に数列\ (F_i+1)_{i\gt0}\ の素因子分解の列をまとめます. それぞれの番号\ n\ について, \ F_n\equiv-1\ \ (\mathrm{mod}.p)\ となる\ 4\mathbb{Z}+3\ 型の素数\ p\ が存在しているか否かを確かめてみてください. \begin{align} 2=&\;2,\\ 2=&\;2,\\ 3=&\;\textbf{3},\\ 4=&\;2^2,\\ 6=&\;2\times\textbf{3},\\ 9=&\;\textbf{3}^2,\\ 14=&\;2\times\textbf{7},\\ 22=&\:2\times\textbf{11},\\ 35=&\;5\times\textbf{3},\\ 56=&\;2^3\times\textbf{7},\\ 90=&\;2\times5\times\textbf{3}^2,\\ 145=&\;(5\times29),\\ 234=&\;2\times13\times\textbf{3}^2,\\ 378=&\;2\times(\textbf{3}^3\times\textbf{7}),\\ 611=&\;13\times\textbf{47},\\ 988=&\;2^2\times13\times\textbf{19},\\ 1598=&\;2\times29\times\textbf{31},\\ 2585=&\;5\times(\textbf{11}\times\textbf{47}),\\ 4182=&\;2\times(17\times41)\times\textbf{3},\\ 6766=&\;2\times17\times\textbf{199},\\ 10947=&\;(41\times89)\times\textbf{3},\\ 17712=&\;2^2\times13\times(\textbf{3}\times\textbf{227}),\\ 28658=&\;2\times89\times(\textbf{7}\times\textbf{23}),\\ 46369=&\;89\times521,\\ &\vdots \end{align} このように計算してゆくと, 残念ながら偶数番目の Fibonacci 数の中には反例になるものがいくつか現れてしまいます. しかし偶数番目の項の問題は, 素因子分解を考えることによって奇数番目の項の問題に帰結する (後述) ので, これを懸念する必要は有りません.





フィボナッチ数の算術的性質

二次方程式\ xx=x+1\ の二つの解\ x=\frac{\,1\,}{\,2\,}(1\pm\sqrt{5})\ を, 大きいほうから順に\ \phi,\ \bar\phi\ と書きます. すると, 再帰的な二つの等式 \begin{align} \left( \begin{array}{l} \phi^{i+2}=\phi^{i+1}+\phi^i\\\bar\phi^{i+2}=\bar\phi^{i+1}+\bar\phi^i \end{array} \right. \end{align} が成立します. これは, 黄金比の累乗を配列した \begin{align} 1,\ \phi,\ \phi^2,\ \phi^3,\ \ldots \end{align} という数列が, Lucas 数列, Fibonacci 数列と同じく「直前の二項を足して次の項が得られる」という規則と, 「直前の項に一律の比を乗じて次の項が得られる」という幾何数列の規則とを, 併せもっていることを意味しています. このような足し算の規則が類似しているために, 四つの数列 \begin{align} &1,\ \phi,\ \phi^2,\ \phi^3,\ \ldots,\\ &1,\ \bar\phi,\ \bar\phi^2,\ \bar\phi^3,\ \ldots,\\ &2,\ 1,\ 3,\ 4,\ \ldots,\\ &0,\ 1,\ 1,\ 2,\ \ldots,\\ \end{align} はとてもい相性を有し, 例えば次のような等式を組むことができます.

命題 4. あらゆる整数\ n\ に対して, 等式 \begin{align} \left(\begin{array}{l}\displaystyle\phi^n=\frac{L_n+\sqrt{5}F_n}{2}\\\displaystyle\bar{\phi}^n=\frac{L_n-\sqrt{5}F_n}{2}\end{array}\right. \end{align} が成りたつ.

証明. \ n=0\ および\ n=1\ のときは正しい. 各等式について, ある\ n+1\ \ n\ における等号が成りたつならば, それらを辺々足しあわせて\ n+2\ に対する等式が得られ. また辺々を引けば\ n-1\ の場合が得られるから, 再帰的に確かめることができる.

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\ n\ \ -1\ から\ 6\ の値を代入して数字にするとこの通りになります. \begin{align} \phi^0&=\frac{2+0\sqrt{5}}{2}\ (=1),\\ \phi^1&=\frac{1+1\sqrt{5}}{2}\ \left(=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right),\\ \phi^2&=\frac{3+1\sqrt{5}}{2}\ \left(=\frac{3+\sqrt{5}}{2}\right),\\ \phi^3&=\frac{4+2\sqrt{5}}{2}\ (=2+\sqrt{5}),\\ \phi^4&=\frac{7+3\sqrt{5}}{2},\\ \phi^5&=\frac{11+5\sqrt{5}}{2},\\ \phi^6&=\frac{18+8\sqrt{5}}{2}\ (=9+4\sqrt{5}),\\ &\ \\ \phi^{-1}&=\frac{-1+\sqrt{5}}{2}\ \left(=\frac{2}{1+\sqrt{5}}\right). \end{align}

命題 5. あらゆる整数\ n\ に対して, \ L_nL_n-5F_nF_n=4(-1)^n\ が成りたつ.

証明. 指数法則\ \phi^{n}\bar{\phi}^n=(\phi\bar{\phi})^n\ を \begin{align} &\phi^{n}\bar{\phi}^n=(\phi\bar{\phi})^n\\ i.\ e.\ &\;\frac{L_n+\sqrt{5}F_n}{2}\cdot\frac{L_n-\sqrt{5}F_n}{2}=(-1)^n\\ i.\ e.\ &\;L_nL_n-5F_nF_n=4(-1)^n \end{align} と変形すれば, ここに命題の式が現れる.

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定理 6 (加法定理). あらゆる整数\ m,\ n\ に対して, 等式 \begin{align} \left( \begin{array}{l} 2L_{m+n}=L_mL_n+5F_mF_n\\ 2F_{m+n}=L_mF_n+F_mL_n \end{array} \right. \end{align} が成りたつ.

証明. 指数法則\ \phi^{m+n}=\phi^{m}\phi^n\

\begin{align} &\phi^{m+n}=\phi^m\phi^n\\ i.\ e.\ &\;\frac{L_{m+n}+\sqrt{5}F_{m+n}}{2}=\frac{L_m+\sqrt{5}F_m}{2}\cdot\dfrac{L_n+\sqrt{5}F_n}{2}\\ i.\ e.\ &\;2L_{m+n}+\sqrt{5}\cdot2F_{m+n}=(L_mL_n+5F_mF_n)+\sqrt{5}(L_mF_n+F_mL_n) \end{align}

とする. \ \sqrt{5}\ 無理数であるので, 有理数部と無理数部のそれぞれについて両辺は一致する. 

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上記の加法定理は一見すると複雑ですが, \ m=n\ の場合に得られる二倍公式は, これよりも少し簡潔になります. これらの等式から解るように, 二数列には三角函数との類似性があります.

命題 7 (二倍公式). あらゆる整数\ n\ に対して, \begin{align}\left(\begin{array}{l}F_{2n}=L_nF_n\\ L_{2n}=L_nL_n-2(-1)^n\end{array}\right.\end{align}が成りたつ.

証明. 加法定理と先の命題によって, \begin{align} 2F_{2n}&=L_nF_n+F_nL_n=2L_nF_n,\\ 2L_{2n}&=L_nL_n+5F_nF_n\\ &=L_nL_n+\left(L_nL_n-4(-1)^n\right)\\ &=2L_nL_n-4(-1)^n. \end{align} ゆえに命題が成りたつ.

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次の積和等式もまた三角函数の式と類似しています.

命題 8 (積和等式). あらゆる整数\ m,\ n\ に対して, 等式 \begin{align} \left( \begin{array}{l} L_{m+n}+(-1)^nL_{m-n}=L_mL_n\\L_{m+n}-(-1)^nL_{m-n}=5F_mF_n\\F_{m+n}+(-1)^nF_{m-n}=F_mL_n\\F_{m+n}-(-1)^nF_{m-n}=L_mF_n \end{array} \right. \end{align} が成りたつ.

証明. 加法定理と符号の反転式によって,

\begin{align} L_{m+n}+(-1)^nL_{m-n}&=\frac{\,1\,}{\,2\,}(L_mL_n+5F_mF_n)\\&\qquad+\frac{\,1\,}{\,2\,}(L_mL_n-5F_mF_n)\\&=L_mL_n,\\L_{m+n}-(-1)^nL_{m-n}&=\frac{\,1\,}{\,2\,}(L_mL_n+5F_mF_n)\\&\qquad-\frac{\,1\,}{\,2\,}(L_mL_n-5F_mF_n)\\&=5F_mF_n,\\F_{m+n}+(-1)^nF_{m-n}&=\frac{\,1\,}{\,2\,}(L_mF_n+F_mL_n)\\&\qquad+\frac{\,1\,}{\,2\,}(-L_mF_n+F_mL_n)\\&=F_mL_n,\\F_{m+n}-(-1)^nF_{m-n}&=\frac{\,1\,}{\,2\,}(L_mF_n+F_mL_n)\\&\qquad-\frac{\,1\,}{\,2\,}(-L_mF_n+F_mL_n)\\&=L_mF_n. \end{align}

故に命題が成立する.

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積和等式は, この順番で暗記して, 実用できるようにしておくと便利です.

系 9. あらゆる整数\ n\ に対して, 等式 \begin{align} \left( \begin{array}{rcl} F_{4n}+1&=&L_{2n+1}F_{2n-1}\\F_{4n+1}+1&=&F_{2n+1}L_{2n}\\F_{4n+2}+1&=&F_{2n+2}L_{2n}\\F_{4n+3}+1&=&L_{2n+2}F_{2n+1} \end{array} \right. \end{align} が成りたつ.

証明. 積和等式に代入すれば,

\begin{align} F_{4n}+1&=F_{(2n+1)+(2n-1)}+F_{(2n+1)-(2n-1)}\\ &=F_{(2n+1)+(2n-1)}-(-1)^{2n-1}F_{(2n+1)-(2n-1)}\\ &=L_{2n+1}F_{2n-1},\\ F_{4n+1}+1&=F_{(2n+1)+(2n)}+F_{(2n+1)-(2n)}\\ &=F_{(2n+1)+(2n)}+(-1)^{2n}F_{(2n+1)-(2n)}\\ &=F_{2n+1}L_{2n},\\ F_{4n+2}+1&=F_{(2n+2)+(2n)}+F_{(2n+2)-(2n)}\\ &=F_{(2n+2)+(2n)}+(-1)^{2n}F_{(2n+2)-(2n)}\\ &=F_{2n+2}L_{2n},\\ F_{4n+3}+1&=F_{(2n+2)+(2n+1)}+F_{(2n+2)-(2n+1)}\\ &=F_{(2n+2)+(2n+1)}-(-1)^{2n+1}F_{(2n+2)-(2n+1)}\\ &=L_{2n+2}F_{2n+1}. \end{align}

故に命題が成立する.

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ここから, 数列\ (F_i+1)_{i\geqslant0}\ に現れる素数\ F_1+1=F_2+1=2\ \ F_3+1=3\ のみであることがわかります. また, \ F_n+2\ の式も同様であり, 次のような積の式に分解します.

系 10. あらゆる整数\ n\ に対して, 等式 \begin{align} \left( \begin{array}{rcl} F_{4n+1}+2&=&L_{2n+2}F_{2n-1}\\F_{4n+3}+2&=&F_{2n+3}L_{2n} \end{array} \right. \end{align} が成りたつ.

証明. 積和等式によれば明白である.

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三角函数との対応を表に示します.

表 1. 対応表.





フィボナッチ数の数論的性質

命題 11. 任意の整数\ n\ に対して, \begin{align}3\mid n\Longleftrightarrow2\mid L_n\Longleftrightarrow2\mid F_n\end{align}が成りたつ.

証明. 数列\ (L_i)\ および\ (F_i)\ \ 2\ を法として還元した剰余の列は周期的であり, 共に長さ\ 3\ の循環節\ 0,1,1\ を有する. 故に命題が成りたつ.

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命題 12. 任意の整数\ n\ に対して, \begin{align} n\equiv2,4,5\ \ (\mathrm{mod}.6)\Longleftrightarrow L_n\equiv3\ \ (\mathrm{mod}.4)\end{align}が成りたつ.

証明. 数列\ (L_i)\ \ 4\ を法として還元した剰余の列は周期的であり, 長さ\ 6\ の循環節\ 2,1,3,0,3,3\ を有する. 故に命題が成りたつ.

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命題 13. 任意の整数\ n\ に対して, \ L_n\mid L_{3n}\ が成りたつ.

証明. 積和等式によって, \begin{align} L_{3n}+(-1)^nL_n=L_{2n}L_{n} \end{align} が成りたつ. って, \ L_{3n}\ \ L_n\ により割りきれる.

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一般に, \ m\ を奇数とすれば, \ L_{mn}\ \ L_n\ の倍数になります.





証明

\ n\ \ 4\ で割ったときの余りが\ 1\ である場合, \ 3\ である場合, 偶数である場合の三つに分けて平方数を検索します.

命題 14. \ 4\ の倍数よりも\ 1\ だけ大きい整数\ n\ の内, \ F_n\ が平方数であるものは\ n=1\ のみである.

証明 \ n=1\ について\ F_n\ が平方数であることは自明. それ以外の場合, \ n=4n'+1\ と置けば\ n'\neq0\ であり, \begin{align} F_{4n'+1}+1=F_{2n'+1}L_{2n'}. \end{align} 整数\ n'\neq0\ から素因子\ 3\ を抽出して\ 2n'=3^e\cdot2f\ とするとき, \ 2f\ は法\ 6\ において\ 2\ または\ 4\ に合同になり, \ L_{2f}\equiv3\ \ (\mathrm{mod}.4)\ が得られる. 故に\ L_{2f}\ \ 4\mathbb{Z}+3\ 型の素因子を有し, \ L_{6f},\ L_{18f},\ \ldots\ L_{2n'}\ も同じである. ここに第一補充則を適用すれば, 証明が完成される.

\Box
命題 15. \ 4\ の倍数よりも\ 3\ だけ大きい整数\ n\ の内, \ F_n\ が平方数であるものは\ n=-1\ のみである.

証明 \ n\ が奇数であるならば\ F_n\ \ F_{-n}\ は相等しいから, \ 4\ の倍数よりも\ 1\ だけ大きい番号\ n\ に関する命題 14 において, \ n\ の符号を反転すればこの命題に達する.

\Box

偶数の番号\ n\ の場合は, 上記と異なり剰余の理論のみによって証明することが難しいと言ってよいです (例えば\ F_{24}+1\ \ 4\ の倍数よりも\ 3\ だけ大きい素因子を持たない). 故に二倍公式 \begin{align} F_{n}=L_{n/2}F_{n/2} \end{align} を用いて\ F_n\ 因数分解した上で考察することにします. 等式\ |L_NL_N-5F_NF_N|=4\ によれば, 番号を同じくする Lucas 数と Fibonacci 数の最大公約は\ 1\ \ 2\ に限られることが判るので, \ F_n\ が平方数であるならば, \ F_{n/2}\ か, \ 2F_{n/2}\ かのいずれかが平方数でなければなりません. 詰まり, \ F_n\ が平方数であるか否かという問題は, \ n\ が偶数である場合, \ F_{n/2}\ という数と\ 2F_{n/2}\ という数の形状に関する問題に帰結するということです. これと同様の推論を繰りかえすと, \ F_m\ または\ 2F_m\ を平方数にする奇数\ m\ を把握することによって, Fibonacci 平方数の問題が解決されるであろうと見当が付きます.

または, 先ほどの分解式に現れた\ L_{n/2}\ が平方数または平方数の倍になる整数\ n\ を全て見つけることによっても, 証明が可能です (まさに参考文献にあった方法です). 少し先取りの説明のようになりますが, 単なる Lucas 平方数の問題は, 簡易な初等整数論による解法が存在する (演習問題を参照) のに対して, 平方数の二倍については, これまでの Fibonacci 数に対する考察と同様に, 積和等式から\ 4\mathbb{Z}+3\ 型の因子を構成する必要が生じます.

命題 16. \ 4\ の倍数よりも\ 3\ だけ大きい整数\ n\ の内, \ 2F_n\ が平方数であるものは\ n=3\ のみである.

証明 \ n=3\ について\ F_n\ が平方数の倍であることは自明. それ以外の場合, \ n=4n'+3\ と置けば\ n'\neq0\ であり, \begin{align} F_{4n'+3}+2=F_{2n'+3}L_{2n'}. \end{align} 整数\ n'\neq0\ から素因子\ 3\ を抽出して\ 2n'=3^e\cdot2f\ とするとき, \ 2f\ は法\ 6\ において\ 2\ または\ 4\ に合同になり, \ L_{2f}\equiv3\ \ (\mathrm{mod}.4)\ が得られる. 故に\ L_{2f}\ \ 4\mathbb{Z}+3\ 型の素因子を有し, \ L_{6f},\ L_{18f},\ \ldots\ L_{2n'}\ も同じである. ここに第一補充則を適用すれば, 証明が完成される.

\Box
命題 17. \ 4\ の倍数よりも\ 1\ だけ大きい整数\ n\ の内, \ 2F_n\ が平方数であるものは\ n=-3\ のみである.

証明 \ n\ が奇数であるならば\ F_n\ \ F_{-n}\ は相等しいから, \ 4\ の倍数よりも\ 3\ だけ大きい番号\ n\ に関する命題 16 において, \ n\ の符号を反転すればこの命題に達する.

\Box
命題 18. 偶数\ n\ の内, \ F_n\ または\ 2F_n\ が平方数であるものは\ n=0,\ 2,\ 6,\ 12\ のみである.

証明を簡潔にするために, 平方数または平方数の二倍である数の全体を\ S\ と書くことにします. \begin{align} S=\{0,1,4,9,\ldots\}\cup\{0,2,8,18,\ldots\}. \end{align} これから用いるのは, 最大公約数が\ 1\ または\ 2\ である整数\ a\ \ b\ についての, \ ab\in S\ ならば\ a\in S\ かつ\ b\in S\ という性質です.


証明 \ n=0\ について\ F_0=2F_0=0\ が平方数であることは明白である. それ以外の\ n\ に対して, 先ず\ n=2^ef\ として素因子\ 2\ を抽出し, 帰納法によって, \ e\geqslant3\ なる場合のあらゆる\ F_n\ \ S\ の要素でないことを証明する.


\ \mathrm{I}.\quad e=1\ なる番号\ n\ について

二倍公式\ F_n=L_fF_f\ によれば\ F_n\ \ S\ の要素であるためには\ F_f\ もまた\ S\ の要素でなければならないから, これまでの証明によって \ n=-6,\ -2,\ 2,\ 6\ が必要である. この内\ 2\ \ 6\ のみが充分性を有する.


\ \mathrm{I\!I}.\quad e=2\ なる番号\ n\ について

二倍公式\ F_n=L_{2f}F_{2f}\ によれば\ F_n\ \ S\ の要素であるためには\ F_{2f}\ もまた\ S\ の要素でなければならないから, \ \mathrm{I}\ の証明により\ n=4,\ 12\ が必要である. この内\ 12\ のみが充分性を有する. だし Fibonacci 数列の第十二項とは\ 144\ である.


\ \mathrm{I\!I\!I}.\quad e=3\ なる番号\ n\ について

二倍公式\ F_n=L_{4f}F_{4f}\ によれば\ F_n\ \ S\ の要素であるためには\ F_{4f}\ もまた\ S\ の要素でなければならないから, \ \mathrm{I\!I}\ の証明によって\ n=24\ が必要である. 然し \begin{align} F_{24}=L_{12}F_{12}=322\times144=2\times7\times23\times12^2 \end{align} であり, これは充分性を有しない.


\ \mathrm{I\!V}.\quad e\geqslant4\ なる番号\ n\ について

ある\ e-1\ について, \ F_{2^{e-1}g}\ が如何なる奇数\ g\ においても\ S\ の要素でないことを仮定とする. そのとき\ F_{2^ef}\ \ S\ の要素になるためには, 二倍公式\ F_{2^ef}=L_{2^{e-1}f}F_{2^{e-1}f}\ に現れる因子\ F_{2^{e-1}f}\ \ S\ の要素でなければならないが, 仮定によってこれは不可能である. \ e=3\ のとき, 既に\ F_n\ \ S\ の要素になる\ n\ は存在しないのであるから, この結果はあらゆる\ e\geqslant4\ についても同じである.

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以上によって次の事実が得られたことになります.

定理 19 (1952 Ljunggren, 1964 Cohn). 整数\ n\ の内, \ F_n\ が平方数であるものは\ n=-1,\ 0,\ 1,\ 2,\ 12\ のみである.
定理 20. 整数\ n\ の内, \ F_n\ が平方数の二倍であるものは\ n=-3,\ 0,\ 3,\ 6\ のみである.





演習問題

問. あらゆる整数\ n\ に対して, 等式 \begin{align}L_nL_n-5F_nF_n=4(-1)^n \end{align} および \begin{align}L_{3n}=L_n\left(L_nL_n-3(-1)^n\right) \end{align}が成立することを証明し, Lucas 数列\ (L_i)_{i\in\mathbb{Z}}\ の奇数番目に現れる平方数を全て決定せよ. 加えて, \ 4\ で割ったさいの余りを考えることによって, 同数列の偶数番目には平方数が現れないことを示せ.

 

奇数番目に現れる平方数は\ 1\ \ 4\ のみである.

問. \ F_{2n}+F_{6n}\ が平方数になるような非負の整数\ n\ を全て決定せよ.

 

\ 0,\ 1,\ 6.\

問. \ F_n+F_{n+m}\ が平方数になるような非負の整数\ m\ \ n\ の組みを\ m\leqslant4\ の範囲において全て決定せよ.

 

\ (0,0),\ (0,3),\ (0,6),\ (1,0),\ (1,10),\ (2,2),\ (3,1),\ (3,4),\ (4,2).\

問. Pell 数列の正部分\ 1,\ 2,\ 5,\ 12,\ \ldots\ a,\ b,\ 2b+a,\ \ldots\ に現れる平方数を全て挙げよ.

 

\ 1,\ 169.\

問. 整数列\ 2,\ 27,\ 727,\ \ldots\ a,\ b,\ 27b-a,\ \ldots\ に現れる平方数の二倍の数を全て挙げよ.

 

\ 19602.\

問. 以下のそれぞれの不定方程式を非負整数の上で解決せよ.
\ \mathrm{i})\ \ yy=5xxx+4x.\
\ \mathrm{ii})\ \ yy=xxx+20x.\

 

\ \mathrm{i})\ (0,0),\ (1,3),\ (144,3864).\ \ \mathrm{ii})\ (0,0),\ (4,12),\ (5,15),\ (720,19320).\

問. 二階再帰数列と平方剰余の考察から, \ 0\ でない整数\ a\ に対して, 曲線\ yy=xxx+ax\ に乗る整数点の有限性を証明することは可能か ?

 





参考文献

[1] J. H. E. Cohn (1964), "Lucas and Fibonacci numbers and some Diophantine equations," Glasgow Mathematical Journal, Vol. 7, Issue 1; pp. 24-28.

[2] 奇跡の楕円曲線と144 - フィボナッチ・フリーク





*1:修正前の内容につきましては Mathlog の記事をご覧ください.  リンク : https://mathlog.info/articles/447

*2:反対に\ M\ \ 4\mathbb{Z}+1\ 素数のみから成りたつ整数であるとすると, \ M\equiv1\ \ (\mathrm{mod}.4)\ になり不合理である.

[tex: ]


ALIA VERITAS AD ALIAM SEMPER VIAM STERNIT
ひとつの真理の考究は, かならずまたひとつの真理への道を拓く


フィボナッチ数とは, 黄金比の冪を √5 を用いて表示したときに, 無理数部に現れる分数の二倍である.

\begin{align} (F_n)_{n\geqslant0}=\;&0,\ 1,\ 1,\ 2,\ 3,\ 5,\ 8,\ 13,\ 21,\ 34,\ 55,\ 89,\ 144,\ 233,\ 377,\ 610,\ 987,\ \\&1597,\ 2584,\ 4181,\ 6765,\ 10946,\ 17711,\ 28657,\ 46368,\ 75025,\ \ldots. \end{align}



平方数とは, 或る整数の平方に等しい数である.

\begin{align} (n^2)_{n\geqslant0}=\;&0,\ 1,\ 4,\ 9,\ 16,\ 25,\ 49,\ 64,\ 81,\ 100,\ 121,\ 144,\ 169,\ 196,\ 225,\ 256,\ \\&289,\ 324,\ 361,\ 400,\ 441,\ 484,\ 529,\ 576,\ 625,\ \ldots. \end{align}



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算 術 ノ ー ト

Arithmētica はラテン語の第一変化名詞で, 算術や初等的な整数論を意味します. 当ブログでは, 算術と整数論, 特にフィボナッチ数や平方数に関する事柄, 面白いと感じた問題, そして数論における定理について, 気ままに記事を投稿します. 記事の内容に関する誤植や新しい発見などが有りましたら, 私の Twitter アカウント (@Numerus_A) までご報告頂けますと幸いに思います.

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