Arithmetica

フィボナッチ数と平方数, 記数法.

Arithmetica 算術ノート

フィボナッチ数の判定式 (3)  二次体の整数の整除と単数

〔フィボナッチ数の判定式〕
正の整数 𝑁 に対して, 次の同値が成立する.
5𝑁² ± 4 のうちいずれかが平方数 ⇔ 𝑁 はフィボナッチ数.

この連続記事は, 以下を目標として記したものです.

  • フィボナッチ数の判定式に対して初等的な証明を与える.
  • ペル型方程式の解法について考察し, 二次体\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ とその整数環や単数といった代数的整数論の概念に触れる.



前提知識

集合, 二次方程式の解と係数の関係, 約数と倍数など



(1) の記事 :

フィボナッチ数の判定式 (1) 初等的証明 - Arithmetica 算術ノート

(2) の記事 :

フィボナッチ数の判定式 (2) 二次体とその整数 - Arithmetica 算術ノート







二次体の整数

二次体の整数の整除

さて, 前回の記事で二次体の「数」, 「整数」とは何者かということについて書きました. 今回は, 二次体\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数について倍数や約数(整除)といった「整数」どうしの関係に関する概念を定義し, 二次体の単数についての定理を用いてフィボナッチ数の判定式の別証明を与えようと思います.


整除については普通の整数の場合の定義と一緒です. すなわち, 整数倍で表せることを倍数である, 割り切れると表現し, その逆の関係を約数である, 割り切るといいます.

定義 3.1 二次体\ K=\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ 上の整数\ \alpha,\beta\in\mathcal{O}_K\ について, \begin{align} \alpha=\beta\gamma \end{align} を満たす\ \gamma\in\mathcal{O}_K\ が存在するとき, \ \alpha\ \ \beta\ の倍数である, あるいは, \ \beta\ \ \alpha\ の約数であるという. またこのとき\ \alpha\ \ \beta\ で割り切れる, \ \beta\ \ \alpha\ を割り切るなどともいう.

記号では普通の整数のときと同様に \begin{align} \beta\mid\alpha \end{align} と書きます.


後述するように, 二次体の整数環における整除性にはノルムの値が関わっているのですが, その証明をより透明化するために共役(きょうやく)というものについて考えます. \ \alpha\in\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ \ (\alpha\not\in\mathbb{Q})\ の最小多項式\ f(x)\ とおくと, 二次方程式 \begin{align} f(x)=0 \end{align} は異なる\ 2\ つの解を持ち, そのうちの\ 1\ つが\ \alpha\ です. もう一つの解を\ \overline{\alpha}\ と書き表し, この\ \overline{\alpha}\ のことを\ \alpha\ と対をなす数と捉え, 共役と呼ぶのでした. 二次方程式の解の公式の形を考えれば, \ \alpha=a+b\sqrt{5}\ \ (a,b\in\mathbb{Q},\ b\neq0)\ の共役は \begin{align} \overline{\alpha}=a-b\sqrt{5} \end{align} と表せることがわかります. ただし, \ \alpha\ の最小多項式が一次式, すなわち\ \alpha=a,\ b=0\ のときは\ a-b\sqrt{5}=a=\alpha\ なので, \ \alpha\ 自身をその共役と定義します.


二次体における共役は, 複素数体でいうところの複素共役に対応する概念です.

定義 3.2 \ a+b\sqrt{5}\ \ (a,b\in\mathbb{Q})\ と表される\ \alpha\in\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ に対し, \ a-b\sqrt{5}\in\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ \ \overline{\alpha}\ と書き, \ \alpha\ の共役と呼ぶ.
補題 3.3 任意の\ \alpha_1,\alpha_2\in\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ に対し, \ \overline{\alpha_1+\alpha_2}=\overline{\alpha_1}+\!\overline{\alpha_2}\ かつ\ \overline{\alpha_1\alpha_2}=\overline{\alpha_1}\ \!\overline{\alpha_2}.\

証明. \ \alpha_1=a+b\sqrt{5},\ \alpha_2=c+d\sqrt{5}\ \ (a,b,c,d\in\mathbb{Q})\ とおく. \ (1)\ を確かめることは簡単である.\ (2)\ については, \begin{align} \overline{\alpha_1\alpha_2}&=\overline{(a+b\sqrt{5})(c+d\sqrt{5})}\\ &=\overline{(ac+5bd)+(ad+bc)\sqrt{5}} \\ &=(ac+5bd)-(ad+bc)\sqrt{5},\\ \overline{\alpha_1}\ \!\overline{\alpha_2}&=\left(\overline{a+b\sqrt{5}}\right)\left(\overline{c+d\sqrt{5}}\right)\\ &=(a-b\sqrt{5})(c-d\sqrt{5})\\ &=(ac+5bd)-(ad+bc)\sqrt{5}. \end{align} ここで左辺どうしを比較すれば補題の式が得られる.

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補題 3.4 任意の\ \alpha,\beta\in\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ に対し, \ N(\alpha\beta)=N(\alpha)N(\beta).\

証明. 補題 3.3 より\ \overline{\alpha\beta}=\overline{\alpha}\ \!\overline{\beta}\ なので, \begin{align} N(\alpha\beta)=\alpha\beta\overline{\alpha\beta}=\alpha\overline{\alpha}\beta\overline{\beta}=N(\alpha)N(\beta). \end{align}

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以上の補題から, 次の性質が導けます.

命題 3.5 \ \alpha,\beta\in\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ に対し, \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数環において\ \alpha\ \ \beta\ で割り切れるならば, \ \mathbb{Z}\ において\ N(\alpha)\ \ N(\beta)\ で割り切れる.

証明. \ \alpha\ \ \beta\ で割り切れるとき, 定義より\ \alpha=\beta\gamma\ となる\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ 上の整数\ \gamma\ が存在する. 補題 3.4 から, この等式において両辺のノルムをとると \begin{align} N(\alpha)=N(\beta)N(\gamma) \end{align} となるが, \ \alpha,\beta,\gamma\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ 上の整数であり\ N(\alpha),N(\beta),N(\gamma)\in\mathbb{Z}\ なので, \ N(\alpha)\ \ N(\beta)\ で割り切れる.

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これで, \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ における倍数, 約数の関係が捉えやすくなりました.



二次体の単数

最後の準備は, 二次体の単数と呼ばれる概念についてです.


\ x^2-5y^2=\pm4\ を変形した方程式 \begin{align} \alpha\beta=\pm1\quad\ \left(\alpha=\frac{x+y\sqrt{5}}{2},\ \beta=\frac{x-y\sqrt{5}}{2}\right) \end{align} を眺めると, \ 2\ つの\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の元\ \alpha,\beta\ はかけると\ \pm1\ になる「数」の組であり, 通常の有理数の世界でいえば\ 1\ の約数に相当します. このような「整数」は, 実は二次体においても非常に特別な役割を持ちあわせているのです.

定義 3.6 二次体\ K=\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の元のうち, 次の\ 2\ つの条件を満たすようなものを整数環\ \mathcal{O}_K\ の単数, あるいは簡潔に\ K\ の単数と呼ぶ.

\ (1)\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ 上の整数である.
\ (2)\ \ 1\ の約数である. すなわち, かけて\ 1\ となる\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ 上の整数がある.

有理数\ \mathbb{Q}\ の世界で類似したものを考えると, 全く同じ条件に当てはめることで\ \mathbb{Q}\ の単数は\ \pm1\ \ 2\ つのみであるということが解るでしょう.


一方で, \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の世界では不思議なことに, 単数は無数に存在することが知られています.

命題 3.7 \ K=\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の元\ \alpha\ \ K\ の単数であることと, 以下の\ 2\ つの条件が同時に満たされることは同値である.

\ (1)\ \ \alpha\in\mathcal{O}_K.\
\ (2)\ \ N(\alpha)=\pm1.\

証明. (条件の十分性)\ \alpha\in\mathcal{O}_K\ かつ\ N(\alpha)=\pm1\ のとき, \begin{align} \alpha\overline{\alpha}=N(\alpha)=\pm1 \end{align} により, 逆数\ 1/\alpha\ は共役\ \overline{\alpha}\ \ \pm1\ 倍(複号同順)に等しい. 定義から\ \overline{\alpha}\ \ \alpha\ と同じ二次方程式の解であるので\ \overline{\alpha}\in\mathcal{O}_K\ , すなわち符号違いの\ 1/\alpha\ \ \mathcal{O}_K\ の元である. よって\ \alpha\ \ \mathcal{O}_K\ の単数である.

\ \alpha\ \ 1\ の約数であることを示すには, \ 1=\alpha\beta\ となる\ \beta\in\mathcal{O}_K\ の存在を示さなければなりませんが, これは\ \beta=1/\alpha\ \ \mathcal{O}_K\ の元であることと同じです. そこで, 与えられている\ N(\alpha)=\alpha\overline{\alpha}=1\ という条件をもとに\ 1/\alpha\ \ \mathcal{O}_K\ の元であることを説明する流れになります.


(条件の必要性)\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数\ \alpha\ に対して\ \alpha\in\mathcal{O}_K\ は自明. また, \ \alpha\ の逆数\ 1/\alpha\ に関して\ \alpha\cdot1/\alpha=1\ であり, 両辺のノルムを比較すると \begin{align} N(\alpha)N(1/\alpha)=N(1)=1. \end{align} \ \alpha,\alpha'\in\mathcal{O}_K\ により\ N(\alpha),N(\alpha')\in\mathbb{Z}\ であるから, \ N(\alpha)\ \ 1\ の約数になるので\ N(\alpha)=\pm1\ が成立する.

通常の整数の場合の経験則から, \ 1\ の約数であるという条件の強さが何となく予想できるかもしれませんが, それを利用するためにはノルムをとって\ \mathbb{Z}\ での整除関係に落とせばよい, ということです.
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ここで再び\ x^2-5y^2=\pm4\ の正整数解の話に戻りますと, \begin{align} \alpha\beta=\pm1\ \ \left(\alpha=\frac{x+y\sqrt{5}}{2},\ \beta=\frac{x-y\sqrt{5}}{2}\right) \end{align} により\ x\equiv y\ \ ({\rm mod}\ 2)\ , よって\ \pm\alpha,\ \pm\beta\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数です. 右辺が\ \pm1\ のいずれであっても, それぞれ \begin{align} \alpha(\pm\beta)=1\\ \end{align} あるいは \begin{align} (\pm\alpha)\beta=1 \end{align} と変形することによって\ \alpha,\ \beta\ は単数であることが判ります. そこで, \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数には具体的にどのような元があるのかを調べます.

補題 3.8 以下が成立する.

\ (1)\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数どうしの積はまた\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数である.
\ (2)\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数どうしの積はまた\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数である.

証明. \ (1)\ \ \alpha,\beta\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数のとき \begin{align} \alpha=\frac{x_1+y_1\sqrt{5}}{2},\ \beta=\frac{x_2+y_2\sqrt{5}}{2},\\\ x_1\equiv y_1,\ x_2\equiv y_2\ \ ({\rm mod}\ 2) \end{align} なる\ x_1,y_1,x_2,y_2\in\mathbb{Z}\ が存在し, このとき \begin{align} \alpha\beta=\frac{(x_1x_2+5y_1y_2)+(x_1y_2+x_2y_1)\sqrt{5}}{4}. \end{align} 右辺の値を\ (x'+y'\sqrt{5})/2\ \ (x',y'\in\mathbb{Q})\ とおくと,

\begin{align} &2x'=x_1x_2+5y_1y_2\equiv x_1x_2+5x_1x_2\equiv0\ \ ({\rm mod}\ 2),\\\ &2y'=x_1y_2+x_2y_1\equiv x_1x_2+x_2x_1\equiv0\ \ ({\rm mod}\ 2) \end{align}

なので\ x',y'\in\mathbb{Z}.\ あとは\ x'\equiv y'\ \ ({\rm mod}\ 2)\ を示せばよいが, これは

\begin{align} 2(x'-y')&=x_1x_2+5y_1y_2-x_1y_2-x_2y_1\\\ &\equiv x_1x_2+y_1y_2-x_1y_2-x_2y_1\ \ ({\rm mod}\ 4)\\\ &\equiv (x_1-y_1)(x_2-y_2)\equiv0\ \ ({\rm mod}\ 4) \end{align}

であることから従う. よって\ \alpha\beta\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数である.


\ (2)\ \ \alpha,\beta\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数のとき, 定義から\ 1=\alpha\alpha^{-1},\ 1=\beta\beta^{-1}\ において\ \alpha^{-1},\ \beta^{-1}\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数である. これらの等式を掛けあわせると \begin{align} 1=(\alpha\beta)(\alpha^{-1}\beta^{-1}) \end{align} となるが, \ (1)\ により\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数どうしの\ \alpha\beta\ および\ \alpha^{-1}\beta^{-1}\ はまた整数になるので, \ \alpha\beta\ \ 1\ の約数, すなわち単数である.


\ (2)\ (別証明)\ \alpha,\beta\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数のとき, \ (1)\ により\ \alpha\beta\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数である. さらに, \begin{align} |N(\alpha\beta)|=|N(\alpha)||N(\beta)|=1\cdot1=1 \end{align} より\ N(\alpha\beta)=\pm1\ なので, 命題 3.8 によれば\ \alpha\beta\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数である.

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命題 3.9 \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数は\ \pm\phi^n\ \ (n\in\mathbb{Z})\ のみである.

\ K=\mathbb{Q}(\sqrt{5})\ とおくと

\begin{align} &\phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\in\mathcal{O}_K, &&\phi^{-1}=\frac{2}{1+\sqrt{5}}=\frac{-1+\sqrt{5}}{2}\in\mathcal{O}_K \end{align}

であって\ \phi\ \ K\ の単数です. \ K\ の単数は他にも無数にありますが, その中でも\ \phi\ \ 1\ より大きい最小の単数であり, このような単数を基本単数といいます. \ \phi\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ \ 1\ より大きい最小の単数である理由については, これまでの考察も踏まえて, 考えてみてください(→注釈*1).

証明. まず補題 3.8 によると, 単数どうしの掛け算は単数を与えるから, 上に揚げた数が単数であることがわかる. この他に単数がないことを示すために, すべての\ n\ に対して\ \phi^n\ \ \phi^{n+1}\ の間に単数が存在しないことを証明する. \ \varepsilon\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の正の単数とする. このとき, \ \phi\gt1\ によると \begin{align} \phi^n\le\varepsilon\lt\phi^{n+1} \end{align} を満たす\ n\in\mathbb{Z}\ がただ一つ存在する. 両辺を\ \phi^n\ で割ると \begin{align} 1\le\varepsilon\phi^{-n}\lt\phi. \end{align} 補題 3.8 により単数どうしを掛け合わせるとまた単数となるので, \ \varepsilon\phi^{-n}\ は単数である. ここで仮に\ 1\lt\varepsilon\phi^{-n}\lt\phi\ であったとすると\ \phi\ \ 1\ より大きい最小の単数であったことに反する. よって\ 1=\varepsilon\phi^{-n}\ , つまり\ \varepsilon=\phi^n\ が成り立つ.


また\ \varepsilon\ が負の単数のときは, 単数どうしの\ \varepsilon\times(-1)=-\varepsilon\ が正の単数であるから, すでに示したことによって, \ \varepsilon=-\phi^n\ となる\ n\in\mathbb{Z}\ の存在がわかる.

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ただし, 証明中で用いた記号\ \varepsilon\ ギリシアアルファベットのepsilon(イプシロン,  エプシロン)の小文字です.


また

\begin{align} 1\lt\phi\lt\phi^2\lt\phi^3\lt\cdots \end{align}

なので\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数は無数に存在していることがわかりました.




以上で準備は完了です. あとはこれまでの内容をまとめ上げれば定理 2.1 が得られます.





もう一つの証明

定理 2.1 正整数の組\ (x,y)\ が方程式\ x^2-5y^2=\pm4\ の解であるための必要十分条件は, \begin{align} \frac{x+y\sqrt{5}}{2}=\phi^n \end{align} を満たす\ n\in\mathbb{N}\ が存在することである.

証明. \ (x,y)\ \ x^2-5y^2=\pm4\ の正整数解とすると \begin{align} \alpha\overline{\alpha}=\pm1\ \ \left(\alpha=\frac{x+y\sqrt{5}}{2}\right). \end{align} が成立する. これは\ N(\alpha)=\pm1\ と書いても同じである. ここで, \ x^2-5y^2=\pm4\ \ {\rm mod}\ 2\ で還元すると \begin{align} x^2-5y^2\equiv0\ \ ({\rm mod}\ 2)&&x\equiv y\ \ ({\rm mod}\ 2) \end{align} になるので\ \alpha,\overline{\alpha}\ は二次体\ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の整数である. さらに, \ \alpha(\pm\overline{\alpha})=1\ から\ \alpha\ \ \mathbb{Q}(\sqrt{5})\ の単数であり, \ x,y\ge1\ から\ \alpha\ge\phi\ なので \begin{align} \alpha=\frac{x+y\sqrt{5}}{2}=\phi^n \end{align} なる\ n\in\mathbb{N}\ が定まる. また逆に, このような\ n\ が存在するならば, \ \alpha\overline{\alpha}=\pm1\ であり, \ x^2-5y^2=\pm4\ であるから, \ (x,y)\ はペル型方程式の正の整数解である.

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最後に\ \phi^n\ \ a+b\sqrt{5}\ の形にするために少しの計算を行います. 

命題 3.10 任意の\ n\in\mathbb{N}\ に対して, \ \displaystyle\phi^n=\frac{L_n+F_n\sqrt{5}}{2}.\

証明. \ n\ に関する三項間の帰納法で示す.

\begin{align} \phi^n=\frac{L_n+F_n\sqrt{5}}{2},&&\phi^{n+1}=\frac{L_{n+1}+F_{n+1}\sqrt{5}}{2} \end{align}

の成立を仮定するとき, 等式\ \phi^2=\phi+1\ の両辺に\ \phi^n\ を乗じて \begin{align} \phi^{n+2}&=\phi^{n+1}+\phi^n\\ &=\frac{L_{n+1}+F_{n+1}\sqrt{5}}{2}+\frac{L_n+F_n\sqrt{5}}{2}\\ &=\frac{L_{n+2}+F_{n+2}\sqrt{5}}{2} \end{align} となるので, \ n+2\ の場合も成り立つ. あとは\ n=1,2\ の場合を確かめるのみであるが, \begin{align} &\phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2}=\frac{L_1+F_1\sqrt{5}}{2}\\ &\phi^2=\frac{3+\sqrt{5}}{2}=\frac{L_2+F_2\sqrt{5}}{2} \end{align} であるから正しい.

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定理 1.1' 方程式\ x^2-5y^2=\pm4\ の正整数解は\ (x,y)=(L_n,F_n)\ によって与えられる.

証明. 定理 2.1, 命題 3.10 によって自明である.

 

リュカ数列およびフィボナッチ数列の単調増加性, つまり

\begin{align} &L_{n+1}=L_n+L_{n-1}\gt L_n\ \ (n\ge2),&&L_2\gt L_1\\\ &F_{n+1}=F_n+F_{n-1}\gt F_n\ \ (n\ge2),&&F_2=F_1 \end{align}

という大小の序列を考えれば, \ (x,y)=(L_n,F_n)\ \ n\ 番目の解であることも容易にわかります.





種明かし

(1)の記事において, \ x^2-5y^2=\pm4\ のある正整数解\ (x,y)\ から\ 1\ つ前の解を生み出す函数 \begin{align} f\;\colon\;(x,y)\longmapsto\left(\frac{5y-x}{2},\frac{x+y}{2}\right) \end{align} を扱いましたが, なぜこのように\ f\ を定義するとうまくいくのかという理由については紹介できませんでした. 実は, この変換は定理 2.1 を用いれば簡単な計算で導出することができます.


\ x^2-5y^2=\pm4\ の正整数解\ (x_n,y_n),\ (x_{n+1},y_{n+1})\ をとると, 定理 2.1 から \begin{align} \frac{x_{n}+y_n\sqrt{5}}{2}\cdot\frac{1+\sqrt{5}}{2}=\frac{x_{n+1}+y_{n+1}\sqrt{5}}{2} \end{align} が成立し, 両辺を\ (1+\sqrt{5})/2\ で割ると

\begin{align} \frac{x_n+y_n\sqrt{5}}{2}&=\frac{x_{n+1}+y_{n+1}\sqrt{5}}{2}\cdot\frac{2}{1+\sqrt{5}}\\ &=\frac{x_{n+1}+y_{n+1}\sqrt{5}}{2}\cdot\frac{-1+\sqrt{5}}{2}\\ &=\frac{(5y_{n+1}-x_{n+1})+(x_{n+1}-y_{n+1})\sqrt{5}}{4}\\ &=\frac{\dfrac{5y_{n+1}-x_{n+1}}{2}+\dfrac{x_{n+1}-y_{n+1}}{2}\sqrt{5}}{2} \end{align}

つまり \begin{align} x_{n}=\frac{5y_{n+1}-x_{n+1}}{2},\ y_n=\frac{x_{n+1}-y_{n+1}}{2} \end{align} となって, \ f\ の式形が現れました.





一般のペル方程式と二次体

ここまで方程式\ x^2-5y^2=\pm4\ の正整数解について考えてきましたが, より一般に, 平方数であるような約数を\ 1\ の他に持たない正整数\ d\gt1\ を用いて \begin{align} x^2-dy^2=\pm1\quad\mbox{または}\quad\pm4\ \end{align} の形で表される方程式をペル方程式といいます. 厳密にいうと, \ d\equiv1\ (\mathrm{mod}\ 4)\ のときは \begin{align} x^2-dy^2=\pm4 \end{align} を考え, \ d\equiv2,3\ (\mathrm{mod}\ 4)\ のときは \begin{align} x^2-dy^2=\pm1 \end{align} を考えて, これを\ d\ を係数とするペル方程式と名付けます*2. ここからは, 多少の一般化をまじえながら, 二次体の整数と単数について復習してみることにしましょう. 

 

説明を振り出しに戻します. まず\ d\neq0,1\ を《\ 1\ 以外に平方数の約数を持たない》ような (正または負の) 整数とします. 有理数\ \sqrt{d}\ 加減乗除によって作られる数の全体を \begin{align} \mathbb{Q}(\sqrt{d})=\{a+b\sqrt{d}\mid a,b\in\mathbb{Q}\} \end{align} と表し, これを二次体と呼ぶのでした. 特に\ d\gt0\ のときは実二次体といい, \ d\lt0\ のときには虚二次体といいます. 実二次体は虚数を含みませんが, 虚二次体には少なくとも一つ虚数が含まれます(例えば\ \sqrt{d}\ ).

 

このような一般の二次体を\ K\ とおくと, \ K\ 上の整数とは, \ K\ の要素のうち(\ \mathbb{Q}\ 上の)最小多項式が整数係数であるものとして定義され, その全体は\ \mathcal{O}_K\ と表されます. この\ \mathcal{O}_K\ を表す公式は少し複雑で, \ d\ \ 4\ で割ったときの余りによって二種類に分かれ, \ d\equiv1\ (\mathrm{mod}\ 4)\ のときは \begin{align} \mathcal{O}_K=\left\{\frac{x+y\sqrt{d}}{2}\;\middle|\;x,y\in\mathbb{Z},\ x\equiv y\ (\mathrm{mod}\ 2)\right\} \end{align} という集合になり, \ d\equiv2,3\ (\mathrm{mod}\ 4)\ のときは \begin{align} \mathcal{O}_K=\{x+y\sqrt{d}\mid x,y\in\mathbb{Z}\} \end{align} という集合になります. 証明は命題 2.8 のときと同様なので, 興味のある方は考察してみるとよいでしょう.

答えは次のようになります. 二次体の元\ a+b\sqrt{d}\ (b\neq0)\ を根にもつ二次方程式は, \begin{align} x^2-2ax+a^2-db^2 \end{align} と表されます. トレース\ 2a\ とノルム\ a^2-db^2\ が共に整数であるための条件は, 次の通りです: \ d\equiv1\ の場合, \ a\ \ b\ が共に整数であるか, または共に奇数の半分であること. \ d\equiv2,3\ の場合, \ a\ \ b\ が共に整数であること.

\ \mathcal{O}_K\ が環になること, つまり加法, 減法と乗法について閉じていることも, 前と同じように証明ができます(\ d\ についての場合分けが必要ですが). 

 

\ K\ 上の整数のうち, \ 1\ の約数に当たるものを単数といいます. すなわち, \ K\ 上の整数\ \alpha\ が単数であるとは, \begin{align} \alpha\beta=1 \end{align} を満たす\ K\ 上の整数\ \beta\ が存在することです. 単数どうしの掛け算は必ずまた単数になります. 更に, 単数の逆数はまた単数になります. 

\ \alpha\ \ \alpha'\ を単数とすれば, \ \alpha\beta=1\ \ \alpha'\beta'=1\ から\ (\alpha\alpha')(\beta\beta')=1\ が成り立ちます. \ \alpha\alpha'\ \ \beta\beta'\ \ K\ 上の整数の積であるので, \ K\ 上の整数です. したがって\ \alpha\alpha'\ は単数であるといえます. 逆数の方は, \ \alpha\beta=1\ ならば\ \beta\alpha=1\ だから, 簡単に示されます. 

虚二次体での具体例を挙げると, \ \mathbb{Q}(\sqrt{-1})\ の単数は \begin{align} \pm1,\ \pm\sqrt{-1} \end{align} の四数のみになります. また\ \mathbb{Q}(\sqrt{-3})\ の単数は \begin{align} \pm1,\ \frac{\pm1\pm\sqrt{-3}}{2} \end{align} の六数のみであり, それ以外の虚二次体については, 単数は\ \pm1\ の二数のみになります.

証明は, \ d\equiv1\ の場合と\ d\equiv2,3\ の場合のそれぞれについて, \ K\ 上の整数を文字でおいて, それが単数であるための条件を考えるとよいでしょう. ここで, ある数が単数であるというのは, いいかえれば, その数自身が\ K\ 上の整数であり, かつ逆数もまた\ K\ 上の整数であるということと同値です.

また実二次体\ \mathbb{Q}(\sqrt{d})\ (d\gt0)\ の方の単数は, ある一つの単数\ \varepsilon\ が存在して \begin{align} \pm\varepsilon^n\ (n\in\mathbb{Z}) \end{align} の式に表されます. 

実二次体\ \mathbb{Q}(\sqrt{d})\ (d\gt0)\ の単数の中には, \ 1\ よりも大きい最小の数\ \varepsilon_0\ が必ず存在します (この命題の証明は難しいです. のちの解説記事 https://yu200489144.hatenablog.com/entry/2021/05/30/234100補題 6-1 などで扱っています). これを認めると, 次のように証明ができます: \ \mu\ を任意の単数とします. 符号は関係しないので, \ \mu\gt0\ の場合のみを考えると, 不等式 \ \varepsilon_0^n\leq\mu\lt\varepsilon_0^{n{+}1}\ を満たす整数\ n\ が存在します. 両辺を割って \begin{align} 1\leq\mu\varepsilon_0^{-n}\lt\varepsilon_0 \end{align} とすれば, 中央の\ \mu\varepsilon_0^{-n}\ は単数の積として作られるので単数になります. しかし\ \varepsilon_0\ の最小性により, \ 1\ \ \varepsilon_0\ の間には単数は存在しません. ゆえに\ 1=\mu\varepsilon_0^{-n}\ でなくてはならず, \ \mu=\varepsilon_0^n\ がわかります. よって\ \varepsilon_0^n\ の形の数とその負数が, 単数の全体を作ります. この\ \varepsilon_0\ として当てはまる数のことを基本単数と呼びます.

 

\ \alpha\ を実二次体\ \mathbb{Q}(\sqrt{d})\ (d\gt0)\ の整数とすると, これが単数であることは, \ \alpha\ に対して定義されるノルム \begin{align} N(\alpha)=\alpha\overline{\alpha} \end{align} が\ \pm1\ になることです.

\ \alpha\ が単数ならば, \ \alpha\beta=1\ となる\ K\ 上の整数\ \beta\ があります. このとき\ \alpha,\beta\ の最小多項式は整数係数なので, \ N(\alpha)\ \ N(\beta)\ は整数になります. 加えて\ N(\alpha)N(\beta)=N(\alpha\beta)=1\ が成り立つことを考えると, \ N(\alpha)=\pm1\ がいえます. 逆に\ N(\alpha)=\alpha\overline{\alpha}=\pm1\ とすると, \ \alpha\ の逆数は\ 1/\alpha=\pm\overline{\alpha}\in\mathcal{O}_K\ のように\ K\ 上の整数になるので, \ \alpha\ は単数です.

まとめると, ベル方程式は《与えられた実二次体においてすべての単数を求める問題》と同じであり, かつ, すべての単数は基本単数から成り立ちます. したがって, 基本単数が見つかれば, ペル方程式は解決するのです. では基本単数をどのように見つけるかというと, そのときは一度もとのペル方程式に立ち戻って, 小さい方の値から正整数解を探していくのがよいです(あるいは少し技巧的に連分数を使う解き方もあります). 

 

先取りのようになりますが, 一般的なことを書くと, このように整数の世界を拡張した際には, 新しい世界において「単数」(\ 1\ の約数に当たる数)と「素数」(整数の積分解においてアトムとなる数)がどのような集合を成しているかを考察しておく必要があって, それらを完璧に克服するとようやく, 二次体の上で自在に整数を扱うことができるのです. 二次体上の素数ならびに素因数分解についても, また本ブログで解説できれば嬉しいです. 





演習問題

問. \ d\ を平方数でない正の整数とする. 方程式\ x^2-dy^2=-1\ が整数解\ (x,y)\ を持つとき, 方程式\ x^2-dy^2=1\ もまた整数解を持つことを示せ.

 

問. 次の八数の中に代数的整数 ((2) の記事で定義した最小多項式\ f(x)\ が整数係数であるような複素数) はいくつあるか. ただし厳密な証明は不要である. \begin{align} \alpha_1&=\frac{1}{\sqrt[3]{2}-1},\\ \alpha_2&=\frac{3+\sqrt{13}}{2},\\ \alpha_3&=\sqrt{4+\sqrt{3}},\\ \alpha_4&=\frac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{2},\\ \alpha_5&=\frac{1-\sqrt{3}}{\sqrt[3]{2}},\\ \alpha_6&=\frac{-1+\sqrt{-3}}{2},\\ \alpha_7&=\frac{\,\sqrt{3}\,}{\,3\,},\\ \alpha_8&=\sqrt{2}+\sqrt{3}+\sqrt{6}. \end{align}

 

七個.

問. 二次体 \begin{align} K=\{a+b\sqrt{10}\mid a,b\in\mathbb{Q}\} \end{align} について,
\ (1)\ \ K\ 上の整数の定義を述べよ. また\ a+b\sqrt{10}\in K\ \ K\ 上の整数であるための\ a,b\ 必要十分条件を答えよ.
\ (2)\ \ K\ 上の整数の全体\ \mathcal{O}_K\ は加法, 減法, 乗法について閉じていることを示せ.
\ (3)\ \ \mathcal{O}_K\ の単数の定義を述べ, 単数をすべて求めよ.

 

\ (1)\ \ K\ の要素であって(\ \mathbb{Q}\ 上のモニックな)最小多項式が整数係数であるような数. 同値条件は\ a,b\in\mathbb{Z}.\ \ (2)\ 略. \ (3)\ \ \alpha\in\mathcal{O}_K\ であって, \ \alpha\beta=1\ を満たす\ \beta\in\mathcal{O}_K\ が存在するもの. \ \pm(3+\sqrt{10})^n\ (n\in\mathbb{Z}).

問. ある五桁の平方数\ y^2\ を選択して, \ y^2\ の最下位に\ 1\ を挿入した数すなわち\ 10y^2+1\ がまた平方数になるようにせよ.

 

\ y^2=228^2=51984.\

問. 今回の内容を知らない人にも伝わるように, 方程式\ x^2-5y^2=\pm1\ の正整数解が無限に存在する理由を簡潔に述べよ.

 

等式\ 2^2-5\cdot1^2=-1\ において, 左辺を分解して \begin{align} (2+\sqrt{5})(2-\sqrt{5})=-1 \end{align} とし, この式を累乗することを考える. それぞれの正の整数\ n\ について, \ 2+\sqrt{5}\ \ n\ 乗を計算して\ a_n+b_n\sqrt{5}\ (a_n,b_n\in\mathbb{Z})\ が得られたとする. すると共役の性質から, すべての\ n\ について\ (2-\sqrt{5})^n=a_n-b_n\sqrt{5}\ が成り立つ. よって\ a_n^2-5b_n^2=\pm1\ であるから, 正整数解は無数に存在する. 数列\ (a_n+b_n\sqrt{5})\ は (狭義) 単調増加なので解が重複することもない.

問. \ \phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2},\ \bar\phi=\frac{1-\sqrt{5}}{2}\ として, フィボナッチ数列の一般項が \begin{align} F_n=\frac{\phi^n-\bar\phi^n}{\sqrt{5}} \end{align} の公式で表されることを証明せよ. また, これを用いて, フィボナッチ数の下一桁は周期的であることを示せ. (ヒント: 一般項がかりに\ 2^n\ \ 3^n\ だったとすれば, どのように下一桁の周期性を証明できるか. 必要であれば, 合同式の定義などを二次体に拡張するとよい. )

 

問. \ n\ を正整数とする. 完全数に類似して, \ n\ 自身を除く\ n\ の正の約数の平方和が\ 3n\ に等しくなるような\ n\ を考え, このような\ n\ の値を昇順に並べて数列\ a_1,\ a_2,\ a_3,\ \ldots\ を構成する. たとえば\ a_1=10,\ a_2=65\ であり, これらは \begin{align} 1^2+2^2+5^2&=3\times10\\1^2+5^2+13^2&=3\times65 \end{align} を満たす. \ a_3\ はいくらか.

 

\ a_3=20737.\

問. \ (x,y)\ 直交座標平面において, 二組の直角双曲線 \begin{align} x^2-xy-y^2=\pm1 \end{align} の上に乗るような整点 (格子点) の座標は, 絶対値がフィボナッチ数であること, および各整点の原点からの距離はフィボナッチ数の平方根であることを証明せよ.

 

問. パスカルの三角形の十五段目には, 次のような部分列が現れ, 等式\ 1001+2002=3003\ が見つけられる. パスカルの三角形において横向きに現れる部分列\ a,\ b,\ c\ であって, \ a+b=c\ を満たすようなものが次に現れるのは何段目か. \begin{align} 1,\ 14,\ 91,\ 364,\ 1001,\ 2002,\ 3003,\ 3432,\ \ldots \end{align}

 

百四段目.

問. 下の図のように, 一辺の長さが\ 1\ から\ n\ までの\ n\ 個の正十二角形を一頂点を共有させるように描き, この形状に沿って点を並べることを考える. \ N^2\ 個の正十二角形を描いた図において点の個数がまた平方数になったとき, \ N\ としてありうる正整数をすべて挙げよ.

図 1. 十二角数 (\ n=4\ ).

 

\ N=F_{2a+1} \ (a\ は非負整数).\
問. いかなる素数\ p\ を取っても, フィボナッチ数列の各項を\ p\ で割った余りの列は有限の周期を持つ.
\ (1)\ この事実を証明せよ (前の問題が参考になる).
\ (2)\ \ p\ の剰余のなす集合を\ R=\{0,1,\ldots,p-1\}\ として, \ p^2\ 個のマスからなる平面\ R^2\ の上に, 曲線 \begin{align} C_p=\{(x,y)\mid x^2-5y^2=\pm4\ (\mathrm{mod}.p)\} \end{align} を描く. \ C_p\ に含まれる点の個数は, 上記の周期の長さに一致することを示せ.
\ (3)\ 一周期に含まれる剰余\ 0\ の個数は最大でいくらか.

 

\ (3)\ 四個.

問. フィボナッチ数であって, \ 2\ の冪であるものをすべて挙げよ.

 

\ F_1=F_2=2^0,\ F_3=2^1,\ F_6=2^3.\

この問題の解説記事 :

フィボナッチ数列に現れる 2 の冪と 5 の冪の決定問題 - Arithmetica 算術ノート

問. \ 5^n-4\ が平方数になるような正整数\ n\ をすべて挙げよ.

 

\ n=1,\ 3.\

問. それぞれの正整数\ n\ に対して, その数自身に逆数を加えた和\ n+(1/n)\ \ a_n\ と書く. すなわち \begin{align} &a_1=1+\frac{\,1\,}{\,1\,}=2,\\ &a_2=2+\frac{\,1\,}{\,2\,}=2.5,\\ &a_3=3+\frac{\,1\,}{\,3\,}=3.333\ldots,\\ &a_4=4+\frac{\,1\,}{\,4\,}=4.25,\\ &a_5=5+\frac{\,1\,}{\,5\,}=5.2 \end{align} であり, 積\ a_2a_5\ \ 2.5\times5.2=13\ と整数の値になる. では, どのような正整数の対\ (x,y)\ に対して\ a_xa_y\ は整数になるか. 該当するものをすべて挙げよ.

 

\ (x,y)=(1,1),\ (F_{2n-1},F_{2n+1}),\ (F_{2n+1},F_{2n-1}) \ (n\ は正整数).\

この問題の解説記事 : 

(𝒙 + 1/𝒙)(𝒚 + 1/𝒚) が整数になるような正整数 𝒙, 𝒚 の決定問題 - Arithmetica 算術ノート

問. \ \alpha,\ \beta\ を任意の代数的整数 (虚数でもよい) とし, それらの最小多項式の次数がそれぞれ\ m,\ n\ であるとする. 和\ \alpha+\beta\ および積\ \alpha\beta\ が代数的整数であることを証明するために, \ \gamma\ を和または積を表す文字として, 次の列ベクトルを導入する. \begin{align} \vec{c}=\left(\begin{array}{c}1\\\gamma\\\vdots\\\gamma^{mn}\end{array}\right). \end{align} \ (1)\ \ \alpha,\ \beta\ は代数的整数として定義した. このことを用いて, \ \vec{c}\ がある整数成分の\ (mn+1)\times mn\ 行列\ P\ 複素数成分の\ mn\times1\ 行列 (列ベクトル) \ Q\ の積に分解することを示せ.
\ (2)\ \ A\vec{c}=0\ を満たす整数成分の\ 1\times(mn+1)\ 行列 (行ベクトル) \ A\ が存在することを示せ.
\ (3)\ 上の問いに基づいて, 代数的整数の全体が「環」をなす理由をわかりやすく説明すること.

 





参考文献

[1] 高木貞治 (1931), 『初等整数論講義』, 共立出版.

[2] Raymond E. Whitney (1972), "Advanced Problems and Solutions." The Fibonacci Quarterly, Vol. 10, No. 04; pp. 413-421.

[3] Tianxin Cai, Deyi Chen, Yong Zhang (2013, 2014), "Perfect Numbers and Fibonacci Primes." International Journal of Number Theory, Vol. 11, No. 01; pp. 159-169.

[4] David Singmaster (1975), "Repeated Binomial Coefficients and Fibonacci Numbers." The Fibonacci Quarterly, Vol. 13, No. 4; pp. 295-298.





*1:\ \varepsilon=\displaystyle\frac{x+y\sqrt{5}}{2}\ \ 1\ よりも大きい単数とする. すると\ N(\varepsilon)=\pm1\ すなわち \begin{align} x^2-5y^2=\pm4. \end{align} また\ 1\ より大きいことによって \begin{align} x+y\sqrt{5}\gt2. \end{align} \ (x,y)\ 平面上のグラフからわかるように, これらを満たす\ (x,y)\ \ x\gt0\ かつ\ y\gt0\ の領域にしかない. よって基本単数は, \ (x,y)\ を方程式\ x^2-5y^2=\pm4\ の正の整数解とするときの\ (x+y\sqrt{5})/2\ の最小値(すなわち\ \displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2}\ )である.

*2:\ d\ \ 4\ で割り切れる場合は, 最初の設定により除かれています.

[tex: ]


ALIA VERITAS AD ALIAM SEMPER VIAM STERNIT
ひとつの真理の考究は, かならずまたひとつの真理への道を拓く


フィボナッチ数とは, 黄金比の冪を √5 を用いて表示したときに, 無理数部に現れる分数の二倍である.

\begin{align} (F_n)_{n\geqslant0}=\;&0,\ 1,\ 1,\ 2,\ 3,\ 5,\ 8,\ 13,\ 21,\ 34,\ 55,\ 89,\ 144,\ 233,\ 377,\ 610,\ 987,\ \\&1597,\ 2584,\ 4181,\ 6765,\ 10946,\ 17711,\ 28657,\ 46368,\ 75025,\ \ldots. \end{align}



平方数とは, 或る整数の平方に等しい数である.

\begin{align} (n^2)_{n\geqslant0}=\;&0,\ 1,\ 4,\ 9,\ 16,\ 25,\ 49,\ 64,\ 81,\ 100,\ 121,\ 144,\ 169,\ 196,\ 225,\ 256,\ \\&289,\ 324,\ 361,\ 400,\ 441,\ 484,\ 529,\ 576,\ 625,\ \ldots. \end{align}



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算 術 ノ ー ト

Arithmētica はラテン語の第一変化名詞で, 算術や初等的な整数論を意味します. 当ブログでは, 算術と整数論, 特にフィボナッチ数や平方数に関する事柄, 面白いと感じた問題, そして数論における定理について, 気ままに記事を投稿します. 記事の内容に関する誤植や新しい発見などが有りましたら, 私の Twitter アカウント (@Numerus_A) までご報告頂けますと幸いに思います.

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